16回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件



正田醤油株式会社本社屋 

所在地:群馬県館林市栄町3-1
竣工年19081915
改修年2004
用途:(改修前)醤油蔵、製品倉庫
        (改修後)事務所・ホール・ギャラリー
所有者:正田醤油
改修設計者:マヌファット+堀之内建築事務所
改修施工者:清水建設梶A河本工業  

この建物は、明治末期から大正初期に建設された醤油醸造用の木造の醤油蔵で、昭和40年代に製品倉庫へと転用され、区画整理と共に取り壊されることになっていたものである。
美しい木造の小屋組をもつ建物の解体を惜しむ声を受け、改修して本社屋として再利用されたもので、2棟の建物は本社棟とホール棟として利用されている。
 改修に当たっては、建設当時の古材は強度確認をした上で、使用可能なものを利用して補修・補強を行い、屋根の瓦もできるだけ再利用するほか、外壁は土佐漆喰、内壁は漆喰とスギ杉板で仕上げるなど、当初の意匠を残すことが心がけられている。
新たに耐力要素が必要な部分には、元の建物にも使われていた方杖、登り梁等の「斜材」が積極的に用いられ、屋根面には厚さ18mmの野地板を斜めに張るなど、建設当初の蔵のオリジナリティを活かす形で耐震補強が行われている。また、2棟の蔵は製品倉庫に転用された際、フォークリフトが通行しやすいように上屋柱が一本おきに切断され、鉄骨梁が入れられていたが、今回は鉄骨を取り去り、切断された柱を根継ぎするなどして、当初の形に戻す努力が行われている。
アトリウムガラス屋根にはスギ新材を格子状に配置し日除けとした。既存は光の入らない建物だったが、明るいオフィスとなった。
設備計画では、天井高さ8mの室内空間において、床面から約2mの居住域を空調する床吹出空調方式が効率的見地から採用されている。これは、配管スペースを兼ねた二重床(DH260mm)の通気性タイルカーペット面から風速2cm/秒で空調空気がにじみ出てくる仕組みとしている。なお、屋根の目立たない位置には換気用の給気と換気の丸ダクトが設置されている。
 アトリウムではレンガ仕上床の躯体に深夜電力を利用した蓄熱型床暖房を施すなど、設備機器の露出を極力抑えた配慮がなされている。
 一方、維持管理面では、高所の露出させた架構部材は意匠的にも見せ場であるだけに、清掃メンテナンスには工夫を施し十分な手入れが必要であろう。
建物内に設置されたギャラリーやショールームは、周辺道路の開通にあわせて市民に開放されることが予定されている。当初の雰囲気を巧みに残し、さらに魅力的な建築に仕上げられている。