16回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件



COCON KARASUMA(古今烏丸)

所在地:京都市下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620
竣工年1938
改修年2004
用途:店舗(改修前)、店舗・事務所(改修後)
所有者:ケイアイ興産
改修設計者:隈研吾建築都市設計事務所、且O信建築設計事務所、鞄建設計
改修施工者:樺|中工務店

 昭和13年(1938年)長谷部竹腰建築事務所の設計で勝呂組により施工竣工した旧丸紅商店京都支店ビルは、当時の先端の技術のもとに建設された京都最大級のオフィスビルであった。戦後GHQに接収され西日本統括司令本部に使用された後、60年余り使用され続けていたが、既に建物としての使命を終えていたこのビルは2000年、現オーナー会社に買収され、再生計画がスタートしている。
 一方、この建物の立地である四条烏丸は古くからのオフィス・銀行街で、阪急烏丸駅、地下鉄四条駅、四条烏丸バスセンターに接し、交通の至便な場所であるにもかかわらず、夜間はさびしい街区であった。
 改修の企画・計画は、京都随一の繁華街である八坂神社・祇園からつらなる南座・四条河原町の大手デパートを中心とするショッピング街や活気のある錦市場とつらなり、四条通りのにぎわいの西の端としてのランドマークとして意図されている。
 低層部の天平大雲紋の光壁によるファサードの一新は、3階まである店舗を表象して明るい街の表情を出すことに成功している。
 店舗の構成も、伝統的唐紙店、若者向けの家具・雑貨、映画館、和洋中バラエティーのある飲食と、独自なリーシングがなされている。
 高層部の外壁改修は、ストックされていた既存のタイルにより補修され旧ビルの格調を残し、外壁の低層部石貼の一画は内部で新しい光の滝に対称して保存されている。
 また、旧オフィスビルの床のイペ材(耐候性に優れた南米産材)は、新しい店舗の床材として再生されている。
 補修されたモザイクタイル仕上げの原設計のスキップ避難階段も、店舗の他階との連続性を生み出し、3層の店舗の一体感を実現している。店舗ゾーンの露出した照明BOXや設備配管は、伝統と現代のコントラストを醸し出しおもしろい。
 設備的には2回程大規模改修を経ており、今回のリフォームは人が集まる魅力作りをコンセプトに、安全性・信頼性と居住性を重視した内容である。
 電気設備においては、従来地下にあった受変電設備の更新と共に屋上階に新しくサブ変電設備を設置し、地下から3Fまでの商業エリア用電源と4Fから8Fまでのオフィスエリア用電源とに分割した。これは電圧降下に対して有利のみでなく、エリア毎の停電が可能な様にメンテナンス性を考慮した電源システムに変更したものである。また、空調方式は中央熱源方式から個別分散空調に変えることにより、ダクトを無くして天井高を確保している。
 省エネルギーに関しては、井水を水洗便所の洗浄水として利用すること、及び自動力率調整装置の設置により無効電力を削減するシステムの構築が図られ、天井は可能な限り躯体を現すことにより、既存躯体の"歴史"と新しい空調・照明の"現代"を重ね合わせている。