16回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件



くらしの友桜新町式場

所在地:東京都世田谷区桜新町2-19-16
竣工年1993
改修年2005
用途:(改修前)自動車修理工場
     (改修後)集会所(斎場)
所有者:鰍ュらしの友
改修設計者:宮尾デザイン事務所
      大成建設活鼡煙囃z士事務所

改修施工者:大成建設

 サザエさんの町として知られる桜新町にある民間の斎場である。その庶民的な住宅地環境の中で、ともすれば敬遠されがちな施設を周到な計画で実現させたことが評価される。
 先ず、自動車修理工場を斎場に転換するという発想がユニークである。元は高級外車専用の為か、少し凝った外観デザインであったが、それがフォーマルな式場に相応しいという利点を生かすとともに、高い階高、余裕ある床荷重といった機能の共通性等、既存の建物の特性を最大限に活用している。
 建物用途がデリケートであるため、特に近隣への配慮が重要で、そのあたりに細心の注意が払われている。敷地自体は準工業地域に在るとはいえ周辺は住宅地の雰囲気があり、それを損なわない為に看板の表示は控えめにし、式の状況が最初から最後(出棺)まで近隣に全く漏れずに建物内で完結するように計画されている。又、開口部には植栽が追加され外部から室内の状況が極力窺がえないようにもしている。断面構成、平面計画上も葬儀と言う特殊な使い勝手、動線を、建築主との緊密な打合せのもと、巧みな処理を行い機能的にも優れたものとしている。
 設備の更新に当たっては、構造躯体にダメージが生じないよう、既存開口を最大限に活用して、各種配管類や空調ダクトの設置計画がなされている。ほとんどの既存設備が撤去され更新されたが、継続可能な設備(受変電・機械駐車・EV・避雷針)はメンテナンスを行い再利用することで、建設費の縮減が図られている。給排水設備では、増圧給水ポンプ方式を採用することで既存の地上設置型受水槽を撤去し、動線処理上重要な一階廻りのスペースを確保している。空調設備も斎場としての使い勝手から、個別空調方式EHPに改修し、経済性と利便性への配慮がなされている。また、日常的な施設の運営は最小限の要員で行なわれ、維持管理も建築主の管理ノウハウが活かされた保全計画に基づいて、各種専門管理業者の協力で実施されている。
 出来上がってみればあたかも最初から計画されたかのようにも感じられ、事業としても成功していることは、当賞の意図する処に合致し、コンバージョン事例の好例となるものである。