第13回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件

横浜赤レンガ倉庫



所在地:神奈川県横浜市中区新港1−1−1
用 途:文化施設・商業施設(改修後)
    保税倉庫(改修前)
竣 工:1911年(明治44年)
改 修:2002年(平成14年)
所有者:横浜市
改修設計者:叶V居千秋都市建築設計
改修施工者:樺|中工務店

 横浜港に残る明治時代の建築の巨匠、妻木頼黄による、日本の建築技術史上の記念碑的大作である赤煉瓦倉庫、市民からは「浜の赤レンガ」と呼ばれ親しまれてきた赤煉瓦1号倉庫、2号倉庫を、保存と保全を両立させて1号倉庫は文化施設、2号倉庫は商業施設として2002年に再生されたものである。
この建物は、1号倉庫は1913年に、2号倉庫は1911年に竣功したもので、碇聯(ていれん)鉄構法と呼ばれる当時の最新技術を導入し、1号棟と2号棟とではその間の技術の進歩により新旧二つの工法による防火床構造を採り入れ、鉄骨の柱や梁、ドイツ式コルゲート版などの資材は、先端を行く海外技術に求めるなど、当時の技術の粋を集めたレンガ組積造建築の代表的建築である。竣功以来、1945年から1956年までの米軍の長期にわたる接収期間はあったが、以後山下埠頭、本牧埠頭に港湾機能が移る昭和40年代に至るまで港湾倉庫として長い歴史を刻みながら今日を迎えている。
横浜港湾施設の歴史としての場所的位置づけ、1号倉庫と2号倉庫の建設当時の僅かな年数差のなかで起きた事象を物語る建築技術の変容、関東大震災での復旧や米軍接収時代の痕跡など、幾つもの歴史を物語る貴重な文化資産としても重要な建築である。
そして文化施設、商業施設として再生された「横浜赤レンガ倉庫」は、横浜市がこのような貴重な文化資産の保存と、みなとみらい21地区の更なる活性を期待して進めた事業である。
 保存のための調査をはじめ、劣化箇所の復旧と資材、リフォームのための耐震性能の確保、インフラ整備、保存と文化・商業施設転換への法的整合、空間コンセプトと商業施設テナントに対する様々なルールづくりとテナントの理解の獲得など、保存と保全の整合にむけて、綿密に計画され実行されている。
それらの成果は、保存を重視した外観の有り様とともに、内部においても保存と活用の工夫が随所に設えられ、新旧の夫々の調和が細部にわたって綿密に計られ、絶妙の効果をあげている。
 シンプルな広場と赤レンガ倉庫はよく調和され、往時の港の風景に思いがはせる。
 「みなとみらい21地区」の建築群との対比も素晴らしく、この地域全体の都市景観としてのリフォーム、そして港湾倉庫から人々の交歓の場への見事なリフォームである。
設備的には倉庫から文化・商業施設への用途変更であることから、全てにわたり新築への対処と異ならないが、最大限の保存という原則のなかで合理的に解決がなされている。
広場一画の地下に配置された熱源機器室とランドスケープの整合、建物に仕組まれた外調機の景観上の配慮など、景観上も細かい配慮が与えられている。維持管理についても、民間活力を活かし長期にわたって重点を絞った設備更新を運用する計画であり、極めて質の高い環境が維持されるものと考える。