第11回BELCA賞ベストリフォーム部門表彰物件

秋田公立美術工芸短期大学・秋田市立新屋図書館

 本プロジェクトは、秋田市が郊外のこの地域を「ふるさと文化創造エリア」に指定し、美術工芸系の短期大学と地域図書館と生涯学習拠点の構成により、地域に根ざす文化拠点の創出をもって独自の場所性を回復しようとするものである。
 「古きよきモノ」と「新しきよきモノ」が共生する文化施設の建設を目的とし、特に、地域の人々の心象風景としての食糧倉庫群の保存再生を核としている。
 これらの倉庫群は1934年国立農業倉庫として建設され、近年まで米の需給倉庫として使用されていた。桁行45m、梁間15m、切妻造平屋の木造倉庫は約70年の経過にもかかわらず保存状態が良好で、昭和戦前期の木造架構の一到達点を示す価値をもつ例として、保存ないしは移築による活用が望まれていたものである。
 「古きよきモノ」としての倉庫群と、「新しきよきモノ」としての大学研究棟のピロティ-列柱を対峙させることにより、かつての農業地域の都市軸を示す水路、鉄道引込み線は、地域に開放された生活動線として施設内を貫く「記憶のストリート」として甦り、地域に開かれた施設のコンセプトの具現化を図っている。
 保存された8棟の倉庫のうち、生涯学習拠点3棟と地域図書館書庫棟1棟の内部空間に、当時の木造架構のすばらしさを見ることができる。2列に並んだ8m近い細い白木の柱の中央は通路として使われ、その外側は半裁の三角トラス、柱間は方杖で補強した和小屋で、和洋折衷の複合構造は洗練された美しさが残されている。
 特に図書館書庫棟内部はその繊細な骨格の良さが引き出された内部空間となっている。
維持管理は、秋田市役所・教育委員会の手で行われている。米倉倉庫は用途が変更され、繊細な骨格はこれまでとは異なる環境変化に見舞われている。木造建築のデザインと雰囲気を生かし続けるために、今後一層、維持保全のために新たな注意と対策が求められるであろう。

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