第16回BELCA賞選考総評

BELCA賞選考委員会委員長 内田 祥哉

 BELCA賞は、良好な建築ストック、つまり社会の中で生き生きと活用される建築の形成に寄与することを目的に設けられた賞である。周到な長期計画で安定した維持保全を継続しているものをロングライフ、巧みな改修によって建物を蘇生させたものをベストリフォームとし、二部門に分けて表彰している。平成3年から前回まで15回、合わせて146件の表彰件数に達するが、地球環境問題にともなう、建築物の長期利用の気運を背景に、BELCA賞への関心は年々高まりつつある。
 ロングライフ部門は、現存する建築物の平均寿命も延びていることをふまえ、前回から応募要件が「30年以上」に延長された(前々回まで20年以上)。また、今回から、表彰対象者を、新築当時の関係者だけでなく、改修設計や改修施工で貢献のあった方々をも含めさせていただくこととした。

 以上の要件のもとでの厳正な選考により、第16回BELCA賞は、ロングライフ部門4件、ベストリフォーム部門6件の合計10件を表彰することとなった。

 今回表彰されるロングライフ部門には、ホール、会議室を備えた公共施設、大学校舎、観覧場、そして寺院と幅広い用途の建築が含まれている。新築後80年を超える事務所ビルをホールや会議室にコンバージョンした施設、新築後70年以上にわたり関係者や学生たちに大事にされてきた大学校舎、日本を代表する武道の競技場、近代様式の寺院があり、いずれも、関係者が不断の努力によって維持管理の成果を上げてこられたものであった。他方地道な努力が続けられているにもかかわらず、30年を漸く超えた建物の中には、当初の設計が充実していたために、未だ大規模改修の必要のないものもあり、それらが選にもれたことは、今後の審査方針に検討事項を残したと考えている。

 ベストリフォーム部門では、店舗を含んだ事務所ビル3棟、ホール、斎場、企業の本社屋が選ばれた。これまでは、博物館や図書館へのコンバージョンが受賞する例が多かったが、今回は事務所の例が多い結果となった。風格のある著名なオフィスビルが、大規模なリフォームによって、時代の変化に合わせていく姿が実感された。前回に続き所有者の変更に伴った物件が受賞することとなり、不動産の流動化が進む時代も反映することとなった。

 本年も、これまで同様応募物件の半数は経済活動の活発な大都市の建築であり、残念ながら、未だ受賞のない県からの受賞がなかった。建物の維持保全技術の全国的向上を目指す上でも、まだ受賞のない地域からの応募を切に期待したい。  今回表彰される物件が、我が国の優良な建築ストックの形成に寄与することを確信するとともに、建築物の維持保全に日夜努めておられる関係者に対して深い敬意を表したい。