第15回BELCA賞選考総評

BELCA賞選考委員会委員長 内田 祥哉

 BELCA賞は、良好な建築ストック、つまり社会の中で生き生きと活用される建築の形成に寄与することを目的に設けられた賞である。周到な長期計画で安定した維持保全を継続しているものをロングライフ、巧みな改修によって建物を蘇生させたものをベストリフォームとし、二部門に分けて表彰している。平成3年から前回まで14回、合わせて136件の表彰件数に達するが、地球環境問題などを背景に、建築物の長期利用の気運が高まり、BELCA賞への関心は年々高まりつつある。
 ロングライフ部門の応募要件は従来、新築後「20年以上」とされていたが、今回から「30年以上」に延長された。これは、建築物の長寿化への認識が高まり、現存する建築物の平均寿命も延びているので、より高度な物件を表彰しようとの判断によるものである。
 また近年社会の変容に伴い、要求性能の変化が技術革新を進め、主要な外観や内装を保存するロングライフ部門といえども、ベストリフォームに劣らぬ改造で、現代社会に必要な機能を獲得するものが多い。この状況を捉え、第11回の選考よりは、ロングライフとベストリフォームの区別にこだわらないで、合計10件以内を選ぶことになった。以来、第14回までは偶然各部門5件となっていたが、今回は、ロングライフ部門4件、ベストリフォーム部門6件を表彰することとなった。
 今回のロングライフ部門の表彰は、事務所2件、会議所1件、そしてホテル1件となった。新築後70年を超える東京都心の事務所ビル、最近オーナーが代わり外観を復元する一方、機能を一新して生まれ変わった都心の事務所、名古屋の経済界を代表する会議所、そして大阪の老舗ホテルである。ロングライフ部門は、東京を中心とした大都市の受賞が多いが、今回も3大都市の建築が受賞することとなった。いずれも、関係者が不断の努力を続けてこられた成果で、いずれも風雪と共に様々なドラマを蓄えている。
 ベストリフォーム部門では、博物館、図書館、大学、事務所、講堂などと幅広い用途の建築が選ばれた。これらは、建設当初のままでは時代の変化に遅れるとして、設備・機能を一新するリフォームと共に、必要な耐震補強に様々な工法が取り入れられているものが多い。また「コンバージョン」への関心が高い一方で、用途変更のない建築が多いのも最近の特徴である。
 本年もこれまで同様応募物件の半数は東京をはじめとする大都市の建築であり、新しい地域からの受賞がなかった。従って、未だ、BELCA賞の行き届かない県が18県も残されている。「良好な建築ストック」の見本が各地で手近に見られるためにも、一日も早くBELCA賞が総ての都道府県に行き渡ることを期待したい。
 今回表彰される物件が、我が国の優良な建築ストックの形成に寄与すること確信し、受賞物件の関係者に対して深い敬意を表したい。