第12回BELCA賞ロングライフ部門


南山大学 名古屋キャンパス
本部棟、第一研究棟、G棟、G・30棟、H棟

 

所在地:名古屋市昭和区八雲町135

用 途:講義室、研究室、事務棟

竣 工:1964年(昭和39年)

所有者:学校法人 南山学園

設計者:潟戟[モンド設計事務所

施工者:清水建設

維持管理者:南山大学

                                      

南山大学の施設配置は、尾根が南北に通る馬の背のような丘陵を活かし、中央の尾根に人と物の移動幹線を、尾根の地下に設備幹線となる共同溝を設け、それに直交する形で各棟を振分けに配している。それによって各棟は南面し、棟と棟の間の斜面は自然が保全され、全ての窓から緑濃い樹林が楽しめる。工事中設計者は根伐の外3mの所に綱を張り樹木を痛めないよう配慮したといわれる。「自然という巨匠の手になる作品に敵うものはない」という信念のもとに計画されたこのキャンパスは、時を経て、まさに自然と共生した空間に成熟し、かけがえのない緑豊かな教育空間となっている。

建築の外観は、コンクリート打放しに、一部現場の山土の色を塗装した簡素な仕上である。南面する窓にあたる日々の時間帯毎の日射と、季節毎の日射量とをコントロールするために設けられたグリッド状のルーバーは、ファサードを引き締め、ルーバーのつくる陰影とも重なってリズミカルで軽快な立面となっている。

このコンクリート打放しは厚5分の杉板の本実加工の型枠によるもので、その精巧な仕事は、コンクリート打放しの魅力を味わい深いものにしている。なお、庇の効果と樹木によって空気が浄化されているためか、コンクリートはほぼ全体に美しい表面を保っている。

内部仕上も簡素であるが、ここでもコンクリート打放しが各所で魅力を与えてくれる。特に、階段の手摺りやベンチに見られるやわらかいコンクリートの曲面は、当時の職人達の気力と技術の高さを忍ばせ、学生達に使いこなされて、人の温もりを吸いとったような表面に変わっている。床は、テラゾーブロックと、人研ぎのコンクリート仕上で、いずれも今日では殆ど見られないものである。全体に手入れが行き届いており、簡素な中に人間的な親しみを感じる程、日常、管理者が建物を大切にしている様子がよくうかがえる。

教室等の室内設備環境整備は、冷房設備の追加や照度のアップ等により、快適確保に努め、熱源は、ガス焚冷温水発生機、ガスエンジン駆動ヒートポンプ、ガスコージェネ、エコアイス等を採用したり、人感センサーに切り替えたりして、消費電力の抑制を図っている。

このように、設備は維持保全計画に基づき、各棟毎に順次改修されているが、更新や機能付加工事に際し、エネルギーセンターと尾根地下の大規模な共同溝の存在が高い効果を発揮し、日常生活もスムーズに行われている。