第12回BELCA賞ロングライフ部門


中近東文化センター

所在地:東京都三鷹市大沢3−10−31

用 途:博物館・研究所

竣 工:1979年(昭和54年)、1989年(平成元年)増築

所有者:財団法人 出光美術館

設計者:岡田 新一

施工者:鹿島建設

維持管理者:財団法人 中近東文化センター

 

 中近東文化センターは@オリエント関係の考古学資料や文献を収蔵し、研究図書館を主体として、中近東文化に関する調査、研究を行うこと Aオリエント美術品を収集、保管し収蔵品の展示を行うことを目的として昭和54年に竣工、その後研究機能、展示機能の充実のため、増築を行っている。

 敷地は、ルーテル学院大学、東京神学大学および国際基督教大学の敷地に隣接した緑深いスペースの中にあり、環境との調和に配慮して、おちついた淡土色の外装を用いた2階建て低層コンクリート造建物である。

 1階の博物館部門ではオリエント美術品を一般に公開、展示している。展示空間は、風景の見える「窓のある博物館」として外光の導入を大胆に図っている。このため陳列された展示品は、自然な状態で観察が出来、一味違った博物館の雰囲気が味わえる。展示ケースにも耐震的配慮がなされるなど細部にわたってのこだわりが感じられる。2階には研究関係諸室が配され、窓外の景色と相俟って気持ちの良い空間が演出されている。また地下階は講堂及び設備諸室より構成されている。

 本建物は旧耐震基準に依ってはいるが、十勝沖地震および宮城沖地震の教訓をいち早くとりいれ、設計外力の割り増しや柱にはD13100のフープ筋を採用するなど所有者、設計者の本建物への思い入れが感じられる。

 増築時に受変電設備、自家発電機を更新し、機能・安全性の確保を図っており、また竣工20年目には、事務室、展示室、講堂の空調機を更新し、熱効率を向上させるなど省エネルギー化にも積極的に取り組んでいる。

 現在竣工して23年が経過しているが、竣工当時の研究、展示機能は充実され、初期の趣旨は十分に活かされ、大切に維持管理がされている。内外壁も含め、亀裂等の損傷もほとんど見られず良好なメンテナンスの様子が窺われる。

 館内の清掃時には、職員全員で展示物の点検を兼ねた展示ケースの点検を行うなど全員で建物の維持保全に参加するなど、良好に管理運営されている。

 また、建物の各部位は適切な時期に更新が計画されており、その時には設計者、施工者の参画を得て実施されている。